219740 625x480 - 現代育児グッズで快適異世界育児生活 1

小説

現代育児グッズで快適異世界育児生活 1

第1話 スマホとモンスターとオムツ替え

「どうしてこうなった」

電波はあるのに外部との連絡は取れず、あるのは果たして役に立つのか分からないアプリ達だけ。
一体何がどうしたらこんな状況に陥る羽目になるのか!といつまでも嘆いてみても始まらないので取りあえずこの状況を改善すべく、出来る事から始めてみよう。

試しに車のエンジンをかけてみたところ意外や意外、結構あっさりとエンジンがかかる。

「エンジンがかかったところでなぁ」

車のエンジンがかかったことは僥倖だが、周りは辺り一面深い森に覆われていてそもそもどうやったら車がこんな森の中に入ってこれるというのか?というほどに木々が密集しており、車が通れる隙間すらない。
その事実ひとつとっても異世界に転移したのではないかという線は濃厚なのだが、とりあえずはライフラインを確保しないと始まらないので、手持ちの物資を確認する為、車のドアを開け恐る恐る外に踏み出しトランクに周る。

「渡すはずだったオムツとおしり拭き、粉ミルクに哺乳瓶。それと来週職場の同僚たちと行くはずだったキャンプ用に準備しておいた道具一式か」

随分とご都合主義な展開だなぁ。目の前には飲用としても使えそうな澄んだ水が湛えられた湖があり、あとは食材さえ確保出来れば取りあえず生きることは可能そうだ。

「問題はどうやって食材を確保するかだよなぁ」

こんな訳の分からない状況と環境で身の危険を感じないどころか激しく嫌な予感しかしないが、とにかく動き出さないと飢え死には必至。キャンプ道具にと用意していた無骨なサバイバルナイフを腰のベルトに括り付け最低限の護身をして意を決して動きだした、

「せめて食べれそうな木の実とか果物とか見つかればいいけど」

そう言いながら、とりあえず湖にそって歩き周ってみることにした。
歩き出してみると澄んだ空気が心地よく、木々の間を抜けてくる風が濃い緑の香りを感じさせ、こんな状況にも関わらず非常に落ち着いた気分にさせてくれていた。

歩き出して1時間程、やはりというべきかなんと言うべきか、湖の周りをぐるっと周ってはみたものの特に食材になりそうなものは見つからないまま元の車がある位置まで戻ってきてしまった。

「あとは二択、湖で魚釣りをするか、湖に背を向けて森の奥に進むか・・・」

二択とは言っても実際は一択しかない。なぜなら釣り道具なんて持っていないからだ!!そうなるとやはり森に行くしかない訳で。

「背に腹は代えられないし、行くか!!」

腹をくくって森の奥に向かう事を決意した俺は、スマホを手に取りさっき一度見たきりだったマップ機能を再度立ち上げてみる。

ご丁寧な事にしっかりと現在地として俺がいるであろう場所にアイコンが表示され、拡大した状態で歩き出すとかなりの高精度でアイコンも移動している。

「GPSが機能しているとか、仮にここが異世界だとして一体通信衛星はどうなっているw」

そんな疑問を持ちつつスマホ片手に歩きだしていると、スマホの画面に今まで見たことのない赤い点がいくつか表示されていることに気が付いた。
その赤い点までの距離はまだ大分先ではあるものの確実に動いており、動きからして恐らくなんらかの動物であることが予想される。

「人・・・な訳ないよな、なんかそこそこ動き早いし」

このまま進めば、明らかにその赤い点に遭遇する訳で、それが危険な動物だったとしたら俺の身が危うい!
ただいまだにこのマップの機能がしっかりと把握できていないのも事実なので、自分の身に降りかかるかもしれない未知の危険と、このまま無知でいることの将来的な危険を天秤にかけ、俺は後者の方が危険であると判断した。

幸い風向きも今のところ赤い点の方向から、こちらに向かって吹いており、仮に嗅覚が鋭い獣だったとしても匂いで気づかれる心配もないだろうと予想し、目視できる位置までは近づいてみることにした。

恐る恐る歩を進め、スマホで逐一赤い点の位置と自分の位置を確認していると、スマホの上部から今まで見えていなかった青い点が二つ見えるようになった。
その青い点の二つは重なるように表示されており、赤い点はその青い点を囲むようにして動き周っているようだった。

さらにマップを見ていると複数の赤い点が青い点に向かって行ったかと思うと、次の瞬間には赤い点が消えていく様子が見える。

「これって・・・戦闘中?」

だとしたら、俺が向かっている先はかなり危険な場所ではないか?だとしたら激しく遠慮したいところだが、赤い点を敵性の生体反応、青い点を友好的?な生体反応であるとするならば、青い点が襲われていると判断できる訳で・・・。

「行ったって何が出来るわけじゃないだろうけど!」

恐る恐る近づくのをやめ、状況を確認するべく走り出した俺は、木の根に足を取られながらもなんとかその場にたどり着き、目にした場所ではやはり戦闘が繰り広げられていた。

ぽっかりとそこだけ木が生えていない円形の空間で、立派な白銀の鎧を来た40過ぎくらいの男が何か布に包れたものを抱えながら必死に犬のような生物に向かって剣を振るっていた。
犬のような、と形容したがそれはまさしく犬のようなと形容するしかないものだった。
犬にしては異常に大きく、ライオンほどの大きさがある。体毛はこの森の色のような深緑色でこの時点でもう犬ではありえない。
しかもその大きくて太い四肢の先には鋭利な爪が激しく自己主張している。その爪を振りかぶり大きな体躯ごと鎧の男に飛びかかっている。

よく見ると男の足元は夥しい量の赤黒い血で水たまりが出来ており、満身創痍だ。
そんな状態であるにも関わらず、男は腕に抱えているものを庇いながら又一匹、飛びかかってきた犬もどきを切り捨てていた。

「凄い・・・って感心してる場合じゃないな」

スマホに表示されていた最後の赤い点と目の前にいた犬もどきが倒された瞬間に赤い点は消え、残されたのは俺自身を示すアイコンと鎧の男の青い点ともうひとつの点だけとなった。
その鎧の男は力尽きたかのように膝をガクッと地面に着き、手に持った剣を地面に突き刺してそれに持たれかかっていた。

「あの、大丈夫ですか?」
「何者かっ!?」

近づき声をかけた俺に対し、鎧の男は地面に突き刺していた剣の切っ先を俺に向け誰何の声を上げた。
その瞬間、マップに表示されていた青い点が黄色に変わったことから青は有効もしくは敵対関係にない状態を表し、黄色は警戒、赤は敵対関係などを表していると考えられる。

「私は育田生真と申します。正直ここがどこなのか、何故自分がここにいるのか全く分からず途方に暮れていたところ物音が聞こえたのでこうして来たのですが・・・」
「聞きなれない名だな、それにその容姿、『世迷人』か・・・ぐっ!」
「あの、本当に大丈夫ですか?治療をした方が」
「私のことは・・・いい、それよりも、会ったばかりの君にこんな事を頼むのは申し訳ないんだが、この子をどこか安全なところで静かに暮らせるようにして貰えないだろうか?」

そう言った鎧の男の腕の中には布にくるまれた赤ん坊がいた。スヤスヤと眠っており、先ほどまで激しい戦闘を繰り広げていたというのに眠っているとは大物だな・・・。

「いやいや、唐突にそんな事を言われても困ります。それよりも早く治療を!」
「どのみち私はもう助からん。この子だけでも安全なところに逃がして欲しいのだ!」
「こんな正体不明の男に子供預けるとか本気ですか?」
「これでも人を見る目は確かなつもりだ」

押し問答をしていると、唐突に鎧の男が腕に抱いていた赤ん坊を俺に押し付け俺の背後に向かって走り出し、木々の間から姿を現した先ほどよりもひときわ大きな体躯の犬もどきに向かっていった。

「頼んだぞ!!その子を安全なところへ!」
「あんたはどうするんだ!?」
「いいから早く逃げろ!」
「あぁもう!クソッ!分かったよ」
「それでいい。その子を頼んだ!」

鎧の男が必死に犬もどきに立ち向かっている様子をしり目に俺は赤ん坊を抱え急いでその場を後にした。とりあえずはもとの車がある場所まで引き返すしかないだろう。

走り出して暫くすると、地を蹴る複数の足音が微かに聞こえてきた。慌ててマップを確認すると案の定赤い点がこちらに向かってきていた。

「冗談じゃない!」

身を隠すといっても周りにあるのは高い木々であり、赤ん坊を抱えた状態で木登りなどは出来ないし、ひとまず車内であれば多少の安全は確保出来るだろうと考え必死で足を動かす。

「間に合え!」

全力疾走して自然と荒くなる呼吸を無理に抑え込み後方を見ないように走り続け、ようやく湖と車が見えた!
転がり込むように車内に入り、そして後方を見ると複数の深緑色の犬もどきが森と湖の切れ目に差し掛かった時に見えない壁があるかのように、そこに次々とぶつかっていた。

「は?」

いったい全体どういうことか?意味がわからないが取りあえず助かったと判断するべきなんだろうか?

「グルルルルルッ!!!」

しきりに唸り声を発し、こちらを威嚇する犬もどき達は暫くウロウロと歩き周っていたが、やがて諦めたのか元来た道を戻って行った。

「助かった~」

それにしても一体何だったんだ?結界?そんな感じのものがこの湖の周りは張り巡らされれているのか?何にしても助かった。
安心したところで俺は未だ腕の中でスヤスヤと寝息を立てている赤ん坊を見る。

「どうしたもんかなぁ?安全な場所で静かに暮らさせてくれって言われてもな」

半ば強引に預けられてしまったが、あの鎧の男は恐らく生きてはいないだろう。
死に行く男の願いは出来れば叶えてやりたい。まずは出来る事をするしかないか・・・。

そんなシリアスな事を考えていると俺の腕のなかが何だか温かい、これは・・・・。

「どわっ!!これってオシッコか!?」

マジかよ・・・徐々に温かい液体で濡れていく腕に抱えられている赤ん坊を見ているとすっきりした表情でニコニコと笑っている。

まずはオムツを替えないとな。
サバイバルではなんの役に立つか分からないオムツもこういう状況になれば話は別だ。

「オムツってどう替えればいいんだよ!?」

残念ながら俺には育児のスキルは皆無だったようだ・・・


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